超次元壁新聞部(分家)

昨日なかったスーパーメディアがいまここに!!! 時空を越えて、あの「超次元壁新聞部」が再び来日!!

コペルニクスの卵 ――あなたはなぜ斜めに自立した空き缶を見かけないのか

 

 

 まずは以下の記事を見てほしい。

 日本でまだ新型コロナが感染拡大(死者数ベースで)していないことの不自然さについて、iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した京大の山中教授が、文藝春秋橋下徹さんとの対談の中で言及している。

僕が今とても気になっているのは、日本の感染拡大が欧米に比べて緩やかなのは、絶対に何か理由があるはずだということです。何が理由かはわからないのですけれど、僕は仮に「ファクターX」と呼んでいます。​(​山中伸弥×橋下徹 日本人が持つ、新型ウイルスに負けない「ファクターX」とは?  ―― 文藝春秋digital​)

 

​ 同記事で、山中教授は(日本人の大半がすでに免疫を持っているとする)上久保特定教授の仮説にも触れ、「根拠はまだ薄いが、抗体検査によって証明できる可能性がある」ことを指摘している。

 

 さて、みなさん。ここまでの文章を読んで、なにかおかしなことはなかっただろうか?

 いきなり何ホラーみたいなことを言い出してるんだと思われるかもしれないが、これはある種のホラーである。

 

 ――そう、山中教授の発言は、科学的に検証された内容ではない。ほとんど感性や当てずっぽうで、こんなセンシティブな話題の、かなり突っ込んだことを言ってしまっているのだ。

 彼は一体どうしたのか? もうろくしたのか? あるいは、iPS細胞の研究ですべての才能を使い果たしておかしくなってしまったのだろうか?

 

 いや、違う。――というのが本記事の本題だ。

 ここでタイトルの話に触れておこう、あなたは野外で斜めに自立した空き缶を見かけたことはあるだろうか? 私が言っているのは、中に3分の1の水が入った、検索したら出てくるあの状態のことだ。

 ――ない? それはどうしてだろう?

 

 馬鹿にしてるのかと思うかもしれないが、そうではない。これは最尤推定に絡む、ある重要な考え方だ。

――人がある事象を見つけたとき、それが特別だったり例外的であることはほとんどなく、むしろ一般的でありふれたものであることが多い。――

 これはたとえば、地動説の発見などと一緒に語られることが多い。つまり、古代ギリシャでは、すべての星は地球の周りを回るとされていたが、例外として、惑星の存在があった。惑星の「惑わす」という字は、古代ギリシャの学者たちを文字通り惑わしたことに起因している。

 そう、天動説ではすべての星が一定の方向に進んでほしいが、惑星だけはその思惑に反して、好き放題に行ったり来たりするので、説に当てはまらなかったのだ。コペルニクスが地動説に気づいたのは、この惑星の動きからだとされている。

 

 結果を見れば、惑星は例外的でも特別な存在でもなく、自分たちがいる星を含む無数の他の星とまったく同じなありふれた動きをしていたというのが事実だった。

 しかし、コペルニクスにしてみれば、さぞ困難な仕事であったに違いない。彼は科学的な検証が不可能に近い環境でこれをやってのけたのだ。

 

 現在の山中教授が、コペルニクスとまったく同じ立場にいると断言するつもりは私にはない。

 しかし、日本で深刻な感染拡大が「なぜか」「偶然」起こらなかったという事象に行き当たった場合、「これは偶然――つまり特別なことが起こっているのではなく、実はありふれた何かが起こっているに過ぎないのではないか」と考えることは、科学者にとって標準的な姿勢なのだ。

 

 

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